さいたま地裁(佐伯恒治裁判長)で26日、2023年10月に埼玉県蕨市の郵便局で局員を人質に立てこもり、警察官に向けて拳銃を発砲するなどしたとして、殺人未遂などの罪に問われた無職・鈴木常雄被告(88)の裁判員裁判の初公判が開かれ、鈴木被告は罪状認否で「殺意を持って(拳銃を)はじいた気持ちは一切ない」と述べ殺人未遂の罪についてのみ否認し、起訴内容の一部を否認した。
鈴木常雄被告(2023年10月31日)
鈴木被告は2023年10月31日、埼玉県戸田市にある木造2階建てアパート一室の自宅にガソリンなどをまいて火を付けて全焼させた後、同市の「戸田中央総合病院」の室内に向けて路上から拳銃を発砲して、飛び散った窓ガラスや弾丸の破片で男性医師(当時49)と男性患者(当時62)の頭にケガを負わせ、その後、病院から北に約1.5キロ離れた蕨市中央の「蕨郵便局」に押し入り、駆け付けた警察官に発砲し、郵便局員の女性2人を監禁して人質に取り、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症させたなどとされる。鈴木被告は立てこもりから約8時間後に突入した捜査員に逮捕された。
調べに対し鈴木被告は、病院での発砲について「診療の対応に不満があった」と供述し、郵便局での立てこもりについては「郵便局員との交通事故でトラブルがあり、恨みがあった」などと供述していた。
検察側は冒頭陳述で、鈴木被告が暴力団に所属していた際に拳銃を入手したと説明。蕨郵便局や病院とのトラブルに立腹してガソリンなどを用意し「計画通り、報復のために行った」などと指摘した。
一方、弁護側は「人を殺したいとは全く思っていなかった」と反論。事件前日に病院などとのトラブルを思い出し、「驚かそうと考えた」と主張した。
判決は6月4日に言い渡される予定。