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特定危険指定暴力団・工藤會トップの総裁・野村悟被告(78)=二審で無期懲役・上告中=が所有していた福岡県北九州市の土地を親族2人に信託し、所有権を移転していた問題で、工藤會が関与した事件の被害者側が10月、土地を信託された親族を相手取り、所有権移転の抹消などを求める正式裁判を福岡地裁に起こした。

福岡地方裁判所
今回の裁判で被害者側は、野村被告が「賠償金支払い免れ」のために親族2人に信託したと主張し、所有権を野村被告に戻した上で、土地を強制競売にかけるなどして賠償金を回収する狙いがあるとみられる。
野村被告が被害者側への賠償金支払いに応じない場合、野村被告が所有する不動産を差し押さえ、強制競売を経るなどして賠償金を回収できるが、訴訟が続いていた2020年に野村被告が北九州市小倉北区の土地少なくとも23筆(計7068平方メートル)を親族2人に信託し、所有権を移転していた。信託された財産は強制競売などができず、被害者側の賠償金回収が懸念されていた。
この問題を巡り、被害者側は資産保全のため、信託された土地について処分禁止の仮処分を申請。福岡地裁小倉支部は今年5月22日付で、所有権を移転した土地のうち、小倉北区の駐車場など少なくとも9筆(計約947平方メートル)などの処分禁止の仮処分命令を出していた。
野村被告はこれまで、工藤會系組員が関与した事件の被害者や遺族から損害賠償を求める訴訟を次々と起こされ、一部は賠償責任が確定し、工藤會の本部事務所の売却益が支払いに充てられるなどしてきた。2024年11月には、同支部が今回の仮処分の対象とは別の野村被告側が所有する土地の強制競売開始を決定している。