警察庁サイバー特別捜査部と、愛知県警など10道県警の合同捜査本部は16日、他人名義の口座情報を転売目的で譲り受けたなどとして、「日本最大の口座仲介業者」を自称する犯罪インフラ集団のリーダー格で無職・西川悠輔容疑者(32)=住所不定=と、パート従業員・高田香菜美容疑者(32)=北海道帯広市=ら、主要メンバーの20代~30代の男女7人を詐欺と犯罪収益移転防止法違反の疑いで逮捕し、17日に送検した。
押収されたスマホやパソコンなど
西川悠輔容疑者(32)
西川容疑者ら7人は今年4月~5月、福島県の30代女性と共謀し、通信事業者をだまして回線契約を結び、金融機関の口座情報がひも付けたスマートフォンを譲り受けた疑いが持たれている。西川容疑者は容疑を概ね認め、高田容疑者は容疑を否認している。
7人は「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」とみられ、リクルーター役がX(旧ツイッター)などで協力者を募集し、秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」を使って口座や暗号資産(仮想通貨)アカウントの開設、スマートフォン購入を指示していた。
西川容疑者は、口座売買の「闇バイト」を経て約3年前に自身のグループを立ち上げ独立し、自らを「雨くん69」と称した。「闇バイト」のリクルーター約150人を従えて「日本最大の口座仲介業者」と称して単期間で最大勢力に拡大。入手した情報や情報を紐付けしたスマートフォンは、1件当たり数十万~100万円で特殊詐欺グループに転売していた。
特殊詐欺グループとの取引は、今年5月以降だけで約600件確認され、金融機関口座584件、暗号資産(仮想通貨)アカウント364件が転売されていた。売却先は中国系犯罪組織も含まれ、投資詐欺や警察官成り済まし詐欺の受け取りや、マネーロンダリング(資金洗浄)などに使われたとみられ、少なくとも約1億1千万円の受け皿となっていた。
合同捜査本部は、西川容疑者らのグループが抜けた穴を埋める形で、新たな勢力が台頭する恐れがあるとして取り締まりを強化している。